編集者の声・某月風紋

2011年11月号 連載
by 宮

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まさかの水素爆発から203日。緊急時避難準備区域が解除され、地元紙“福島民友”には「住民帰還へ除染推進」の見出しが躍る。

翌朝、浜通りの南相馬を訪ねる。市立原町第一小学校の校庭では重機が轟音を立て、タテヨコ30m、深さ2mの穴を掘る。絨毯状のブルーシートを敷き込み、剥(は)ぎ取った表土を埋め込む。その上をシートで包み、50㎝の土を被(かぶ)せたら完了だ。線量は毎時0.7マイクロシーベルト(μSv)から10分の1程度に下がるという。しかし、小学校の向かいでパン屋を営む只野実さんは「地元住民にとっては避難区域解除のセレモニーにすぎない。校庭や通学路の“点”ではなく街全体を除染しないと、子どもたちは帰って来ない」と嘆く。

市によれば、避難準備区域の住民4万7千人のうち、最悪期は3万9千人が市外に避難し、今も1万9千人が戻って来ない。特に5歳以下の子どもの8割が市外や県外に逃れている。市は10月中に三つの小学校を再開する予定だが「低学年は3分の1しか戻らないだろう」(市の職員)。

県人口はカタストロフだ。3~8月に被災3県から県外に住民票を移した人は9万4千人にのぼるが、人口減少が続いているのは福島だけ。この間の福島の転出超過は0~14歳が約7千人(前年同期の28倍)、親世代の25~44歳が約8500人(同16倍)に及ぶ。

9月27日、「ふるさと除染計画」を発表した福島市は、ホットスポットが点在する渡利(わたり)地区(毎時1.02~4.05μSv)を「最重点除染地域」に指定し、個人の住宅を含む地域一帯を丸ごと除染する方針を決めた。県庁に近い渡利の人口は約1万6千人、除染対象世帯は6500を超える。途方もない費用と労力がかかる。福島市に本社を置く上場企業の県外移転が噂され、除染が成功しなければ産業衰退に拍車をかけるだろう。

東京・世田谷の汚染騒ぎは拍子抜けだったが、福島原発から出た放射線量は広島原爆の約20個分。世界地図ではフクシマもトウキョウもほぼ同じ点であり、ホットスポット出現は驚くに値しない。

   

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